先日、茨城県内で2020年度以降、新たに県立の中高一貫校を新設するニュースがありました。
特につくば市内には既に並木中等教育学校があり、人気も高く興味・関心をお持ちの方も多いと思います。
2020年度からなので、2019年4月の段階で小学6年生以下のお子様に関連していきます。(え、もう来年から!?って感じですよね(笑))
僕も塾の先生の経験があり、国公立も含めた中学受験合格へ複数導いた経験から、こちらのニュースについて深堀していきたいと思います。
具体的に、どこの県立高校が中高一貫校に?
茨城県教育委員会が発表した「県立高等学校改革プラン 実施プランⅠ期」によると、
2020年度 | 太田第一 |
鉾田第一 | |
鹿島 | |
竜ケ崎第一 | |
下館第一 | |
2021年度 | 水戸第一 |
土浦第一 | |
勝田 | |
2022年度 | 水海道第一 |
下妻第一 |
以上のような計画で順次進めていくそうです。
実際に県の発表しているパブリックコメントにおいても県内で県立の中高一貫校を設置を増やしてほしいという前向きな意見が多いです。
この新設により、茨城県全域に県立の中高一貫校が設置されることになり、地域間の格差の是正や県内の子供の進路の多様化が見込めると思います。
県としては、並木中等教育学校を始めとしたすでに設置されている県立の中高一貫校の成果が目に見え始め、自信を持っての新設プランを立てたのだと思います。
今後は交通の便や通学時間から県立中高一貫校への受験機会に恵まれなかった地域でも県立中高一貫校への受験に興味・関心が沸き、小学生の段階から受験に向けて学習を始めたり、学習塾に通い始めることにより、県内の学力の底上げが見込めるかもしれません。
また、県全体では決して私立も含めた中高一貫校がそこまで多くないことから、優秀な学生の他県や東京都の私立中学校への流出を避けたいという目論見もあるかもしれません。
つくば市の小学生への影響は?
今のところ、つくば市内には並木中等教育学校(以下、並木中)、今回の新設プランではつくば市内では新たに中高一貫校が新設される予定はありません。(個人的には、竹園高校が中高一貫になったら面白いのにと思いましたが(笑))
もともと県内に県立中高一貫校が4校しかないこと、そして並木中の通学区域は茨城県全域であることから、つくば市外からも受験する生徒がいます。
そのためか、並木中の倍率は4.18倍と高水準になっています。
今回の新設により、つくば市外からの受験者数は減り、倍率の高騰に歯止めがかかるかもしれません。ただ、新設の中学校よりも長年の運営実績のある並木中の方が信頼感があるため、そこまで倍率を下げる要素にはならないかもしれません。
ただ、東大合格者数毎年二ケタをたたき出す県内トップ校の名門、土浦第一高校が中高一貫になる年は大きな変化が現れる可能性があります。なぜなら、あの土浦第一高校が中高一貫校を併設することから、受験生・保護者の関心は間違いなく高くなり、優秀な学生がそちらへの受験に流れる可能性があるためです。
また、つくば市内の方であれば、近隣の水海道第一高校・竜ケ崎第一高校など、優秀な進学実績を誇る県内有数の進学校の中高一貫校も受験の可能性が出てきます。
いずれにしても、今の4倍からはこの先3年くらいでバリいつが下がる可能性がありますし、なにより市内の受験生・保護者にとっては選択の幅が広がったことも含めるとつくば市内に在住の方にとっても実はプラスにはたらくことは明確です。
公立中高一貫校のメリットって?
このニュースを受け、「うちの子も受験してみようかな」と思った方もいるかもしれません。
しかしながら、今の保護者世代が小学生の頃は、あまりこの公立中高一貫校というのはなじみがなかったと思います。
そもそも、公立中高一貫校に通うメリットとは、どのようなものがあるのでしょうか?
学費が私立に比べて安い
当然ですが、公立なので、学費は私立の中高一貫校に比べて安いです。公立中高一貫校が茨城県に限らず各都道府県で人気である一番の理由はここにあります。
高校受験がない
当たり前ですね(笑)。これは私立と変わらないです。
大学への進学を希望しているご家庭にとっては、やはり大学受験が一番の関心ごと。それに向けて高校受験をせずに6年間学習できるのは、大学受験において有利に働くケースが多いです。
また、学校側も大学受験を見据えた学習カリキュラムを組みますので、私立中学校と同じように大学受験に向けて良質な授業を受けることができます。大学入試改革に不安を抱えている保護者の方は、このあたりについては敏感だと思います。
また、高校受験がないため、中学での部活の「引退」の概念がない学校もあります。多感な中学校の時期に、高校受験のことを気にせず3年間部活動に打ち込める環境も意外と人気の要因です。
少し話がそれますが、最近のニュースで東京都立入試で2019年4月時点で中1の生徒が高校受験をするタイミングで英語の「スピーキングテスト」を導入するというものがありました。この余波は間違いなく他の県にも波及していき、より受験生・保護者の公立高校受験の変化に対する不安も増えていくものと思います。こういった不安なく高校に上がれるのも知られざるメリットです。
思考力・判断力・表現力の基礎を築くことができる
小学生の頃の学習ってすごく大事なんですよね。
小学生の間は、脳の発達がさかんな時期なので、この時期にたくさん勉強したり、たくさん本や文章を読んだり、あるテーマについて友達や大人と議論・討論して自分の意見を表現したり、他者の多様な意見を聞いたり、自分の考えを作文や絵などで表現することは必ずその先にある中学生・高校生・大学生・社会人のステージで活きてくるというのが僕の持論です。
これらは、まさに大学入試改革で取り上げられている「生きる力」、「思考力」「判断力」「表現力」を養成するにはもってこいなんです。高校受験を無事に終え、さて、これから大学受験に向けてこれらの力を身につけようと思って始めてみても、なかなか身につかないと思います。なぜなら、高校生くらいになると、もうこれらの力のベースが成熟とともにある程度できあがっているからです。
だから、これらの力のベースを作り上げる時期である小学生の時に受験勉強をすることは強固なこれらの力のベースを築くのにはもってこいのものです。幼児教育や幼児期の脳開発が一時期ブームになったのも納得がいきますよね。
さて、ここからは入試についてです。
公立と私立で入試のスタイルが違う
そもそも公立中高一貫校の入試とはどういうものかについてお話します。(「私立受験とあまり変わらないのでは?」と思った方、実は違うんです!)
公立中高一貫校の受験でまず挙がってくるのが「私立の受験と違う」ということです。
茨城県内の公立中高一貫校の現時点での試験内容は以下の通り
- 適性検査Ⅰ(45分)
- 適性検査Ⅱ(45分)
- グループ面接(20分程度)
以上の3つに加え、調査書と志望理由書を加味して総合的に合否の判断をしていきます。
・・・ん?
適性検査ってなに?
適性検査とは、茨城県立中高一貫校の募集要項から抜粋しますと、
適性検査Ⅰ(45分間)
小学校で学習した内容を基に、思考力、判断力及び課題を発見し解決する力などをみる。
適性検査Ⅱ(45分間)
文章や資料を基に、読解力、分析力及び自分の考えを表現する力などをみる。
どうでしょうか?これだけ読んでもピンとこないですよね。。。
残念ながら、茨城県立の中高一貫校の入試問題過去問はネット上で公開されていないので、本屋さんで目を通していただくか、他の都道府県立の公立中高一貫校で過去問をネット上で公開している学校の入試問題を見ていただくと、適性検査というものがどんな感じかがわかります(東京都立の中高一貫校が問題をネットで公開しているので、Googleで「都立中高一貫 入試問題」と調べると上位に出てきます)。
ご覧いただくと一目瞭然ですが、私立の問題と全然違います。グラフとか図が多いです。記述多いです。作文あります。私立中学でありがちな小問集合問題とか、パターン問題とか、ないです。。。
受験生にとっては、恐らく初めて見る問題や出題について、各45分という短い時間で情報を整理していく判断力、普段学校であまり扱わないテーマについて答えを導き出す思考力、そして、自分の考えや答えを導いた理由を文章で伝える表現力、これらをバランスよく問うのが適性検査です。
知識の詰め込み・パターン演習の反復では通用しない
世間一般で言われている、私立中学の勉強で代表的な暗記などの詰め込みや頻出パターンの問題演習を反復で行うだけの学習では、適性検査には十分な効果を発揮できません。
この、とっつきにくいところがあるために志半ばで公立中高一貫校の受験を断念する受験生・保護者は少なくないはずです。
※詳しい問題の分析や対策法についてはプロである塾の先生にお任せすることにして、ここではこれ以上深掘りはしません。もっと詳しい情報を知りたい方はお近くの中学受験に対応した学習塾に聞いてみてください。
とっつきにくいけど、将来役に立つのは間違いない
さて、前述で適性検査は「思考力」「判断力」「表現力」をバランスよく出題という話をしました。さらに、これらの力は2020年大学入試改革から始まる「大学入学共通テスト」においても問われる力です。
時間のある方は、Googleで「大学入試改革 試行調査」で検索してみてください。
「大学入学共通テスト」の試行調査(プレテスト)がネット上で公開されています。
実際に数学や国語の問題を見てみると、けっこう適性検査と似ていませんか?
つまり、適性検査の勉強をすることで、6年後の大学入試の対策と必要な力の養成を同時にこなうことができるんです。これはものすごいメリットですね!
どんな子が向いてる?対策は?
ここからは、塾の先生をしていた経験をもとに、独自の視点でどんな子がこの適性検査に向いているのか、対策はどう行うのかについて話します。
向いている子は2パターン
(1)その中学校に入学したいという「自発的」で強い意志を持っている子
要は、受験生本人が、周りからの押し付けではなく自分からその中学校に行きたいと強く思えるかどうかです。これは私立受験においても同様。
小学生は、遊びたい盛りなので、とにかく一番「遊び」が大好きな年ごろです。しかも、中学受験は「任意」です。やらなくても近所の中学校には無条件で進学できます。
そんな大好きな遊びを我慢して取り組むくらいの強い意志があれば、勉強ばかりで辛い時期や成果が出ない時期でもブレない意志で勉強します。「任意なのに」です。
また、勉強することに対する確固たる目的がはっきりとしているので、知識を習得すること、自分が成長することに対する貪欲さは大人をもしのぐものがあります。
以前、「下剋上受験」というドラマがありましたが、その主人公の女の子はまさにこのタイプですね☆
この要素が中学受験において一番重要だと僕は思います。
(2)従順な子
これはあまりいい意味ではありませんが、現に自分の周りでも実際にこういった子が成果を出すことも多いです。
従順な子は、保護者の方、塾の先生などが「これをやってね」という指示に従って勉強します。本人が受験したいかどうかの意思に関係なく。
遊びたいし勉強嫌だから手を抜くことはありません。自分の意志にかかわらず勉強するから、当然成績も伸びますし、結果も出ます。
でも、比較的、受験の後は燃え尽き症候群に陥りやすく、入学後も成績が安定しないケースが多いです。また、「なぜ勉強しているのか」という自我が芽生えだしたときに、その意味が見いだせずに勉強を放り出すこともあります。
こういった子たちを横で見ていて「本当は遊びたいのに我慢しているんだろうな」と思い胸が痛くなることがあります。
だから、(2)のタイプはオススメできません。受験勉強にあまり意味を見出していない子に頭ごなしになんでもやらせるのではなく、本人に「この中学校に行きたい」という思いが芽生え、周囲の大人や家族がそのサポートをする状態、つまり(1)の状態であるのがやはり理想だと僕は思います。
その他に、適性検査に向いている要素は?
好奇心旺盛な子は向いていると思います。いろんな事象に対し、興味を持つことで視野も広がっていきます。
「なんで?」「どうして?」が口癖の子も向いています。お子様からそのような質問をされたときは、華麗にスルーせず、一緒に考えてみたり調べてみることをおすすめします。適性検査では「なぜ?」ということを問うこともあります。身の回りの出来事には必ず「原因と結果」がります。その因果関係を普段の会話から鍛えていき、「結果には必ず原因がある」「その原因は何か」というところに着目する視点は必ず適性検査で役に立ちます。
ジャンルに問わず読書が好きだとか作文を書く、日記を書くのが好きという子も向いています。適性検査では、長い文章を読むことが多いので、そういった長い文章を読むのに抵抗がないというのは強い武器ですし、作文や日記など文章を書くのが好きであれば、記述量の多い適性検査にあっていると思います。とくに日記は、「その日にあったこと」と「それに対し僕は(私は)こう思った」ということを意識すると、自分の意見を表現する力を養えます。
対策法は?
まずは、基礎学力は必須です。社会や理科などの知識や考え方、算数の諸計算や図形の知識、国語の読解力は最低限あった方がいいので、まずは学校のテストで満点か90点くらいを毎回解けるようにしましょう。そして、適性検査で大事なのは苦手科目を作らないこと。私立受験では、入試は教科ごとに分かれているので、たとえば算数が苦手でも他の強化で巻き返せばなんとかなりますが、適性検査は各教科を融合した問題になるので、苦手科目があると不利になることが多いです。まんべんなくできるようにしましょう。
次に、通知表の成績も「よくできる」の数を増やしましょう。これは、公立中高一貫校の入試では「調査書」すなわち「通知表」の成績も加味されるからです。
以下では、それ以外の対策についてお話します。
塾に頼った方がいい?
受験に対する情報や経験が豊富な学習塾に頼る方が多いと思います。僕自身もそれが近道だと思います。
学習塾に通い始める時期は?
学習塾に通い始める時期は、小4~5が最近では一般的のようです。ただ、学習塾によりカリキュラムが異なるので、近隣の塾のHPなどを見て、それぞれの塾が何年生から募集しているのかを調べてみるとよいでしょう。
家庭での対策法は?
学習塾に頼らないという選択肢をとる方、塾に通っていても家庭でもプラスアルファで対策できないかと考える方もいると思います。
前述の通り、お子様の「なぜ?」「どうして?」という質問には真摯に向き合い、答えがわからない時は一緒に考えてみたり、調べてみるといいと思います。
日記でも前述の通り「その日にあったこと」と「それに対し僕は(私は)こう思った」という点に意識して書いてもらうといいでしょう。
読書が好きな子であれば、本を読み終えたあとに「どんな話だった?」「どう思った?」など感想やお子様が本を読んでどう感じたかも聞いてみると、お子様自身が本の内容を整理したり、相手にわかりやすく伝える力、さらにはその本に対する自分の意見を考える力を養えます。
そして、最近は適性検査用の市販のテキストも多くなりました。
学習塾に頼らずご家庭で学習する場合は、これらのテキストを本屋さんなどで購入し、解いてもらうといいと思います。ただ、この時の注意点ですが、解いた問題の採点はなるべく保護者の方が行ってください。適性検査の問題は、答えが1つでない場合や記述問題などどうしても小学生が自己採点できない問題が多いです。お子様が解き終わったあとは、保護者の方が採点し、「こういうふうにしたらよくなる」というアドバイスをしてもう一度自分なりの答えを書いてもらう、できたらたくさんほめる。このサイクルがよいと思います。学力と同時にほめることでお子様の自己承認欲求も満たすことができ、やる気につながっていきます。
受験予定の学校のイベントには積極的に参加する
上述の「向いている子2パターン」で紹介した、(1)の状態で受験勉強を行うのがベストです。つまり、お子様本人が自発的にその中学校に行きたいという確固たる意志を持っている状態です。
百聞は一見に如かずといいますが、やはり小学生も、ばくぜんと「○○中学校はいいところ」と言われるよりも、直接その学校を見て感じた方が「この中学校いいな!」となりやすいです。
ですので、できる限り時間を作って、オープンスクールや体験授業などその中学校が主催する「体験型」のイベントには足を運んでみましょう。そこで実際に「少し先の未来」である在籍性のお兄さんお姉さんに触れ、中学校のことをリアルに感じ、意識し始めると思いますのでとてもよい機会です。
以上、最後までお読みいただきありがとうございました。
これから中学受験についてお考えになる方へこの記事を通して少しでもプラスになれば幸いです。
これからも定期的に教育関係の記事は書いていこうと思いますので今後ともよろしくお願いいたします。